2024年4月に日本型ライドシェアがスタートしました。その実態としては、ほとんどタクシーと変わりがないサービス設計ではあるものの、ライドシェアの安全・安心に不安の声が多くある状態です。そして、6月以降タクシー事業者ではなく一般企業が運営するライドシェアについて検討予定と、第3回デジタル⾏財政改⾰会議の報告がありました。一般企業が運営するライドシェアサービスとなると、安全面の不安がさらに大きくなることが予想されます。特に女性や子供と同乗する場合では、よりサービスの利用が慎重になることでしょう。
先に結論になりますが、女性専用ライドシェアや子供と同乗することを想定したライドシェアサービスは積極検討しても良いのではと思います。利用者と関係者を絞り込むことでより安全性が確保できると思われるからです。では、UberやLyftの事例、更に2024年4月に沖縄で開始された女性専用ライドシェアについて紹介しながら、事業の可能性についてお伝えいたします。
日本型ライドシェアについて
まずは、2024年5月時点での日本型ライドシェアの特徴について抑えておきましょう。日本型ライドシェアは、国内のタクシー需要の増加やタクシードライバー不足によって、タクシーの供給が不足している課題を解決するために開始されました。
特にタクシーの供給が不足している地域から、日本型ライドシェアのサービスが開始しております。日本型ライドシェアサービスを提供する時間帯は、国土交通省や各自治体が調査した結果に基づき、タクシーの不足台数分だけ運行します。
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日本型ライドシェアのドライバーの特徴
日本型ライドシェアドライバーの特徴は様々あり、事業者によってルールも異なります。ここでは代表的な要素をいくつかお伝えいたします。
資格
タクシードライバーは二種免許の取得が条件となっていますが、日本型ライドシェアのドライバーは普通免許(一種免許)があればドライバー条件を満たす事業者がほとんどです。
雇用形態
日本型タクシードライバーの雇用形態はパートタイム雇用のタクシー事業者がほとんどです。副業として日本型ライドシェアドライバーを行う方も少なくありません。
研修制度
パートタイムといえどタクシー事業者の看板を背負って仕事に従事するので、アルバイト同様に基本的な業務指導を事前に行う場合がほとんどです。予約の受け付け方、利用者の確認方法、出発前の確認事項、利用者乗車中のルール、目的地到着後の操作などが該当します。基本的なコミュニケーションマナーなど含まれる場合もあるでしょう。
服装
タクシードライバーは制服を装着している場合が多いですが、日本型ライドシェアドライバーの服装は規定がない場合が多いです。
日本型ライドシェアドライバーの特徴についてお届けしました。このように、ライドシェアドライバーの採用基準は、違反歴がある人は厳しく見るなどはありますが、人間性の観点での採用条件は特に指定されておりません。
日本型ライドシェアの利用について
日本型ライドシェアを利用するためには、タクシー事業と提携している配車アプリから予約する必要があります。ここでは予約可能な配車アプリをご紹介いたします。
Go
まずはアプリのダウンロードと会員登録が必要です。以下画像からアプリダウンロード画面に遷移します。現在、乗るたび500円クーポンがもらえる、「GOする!キャンペーン」の実施期間中です。初めて「GO」アプリにご登録、かつ対象エリアで利用すると、3ヶ月連続で乗車するたびに500円クーポンを月間3回まで受け取ることができます。クーポン利用には条件がありますので、詳細はキャンペーンクーポンご利用条件をご確認ください。
予約フロー
ライドシェア車両は、タクシーが呼びにくい曜日・時間帯のみでマッチングする仕組みとなります。4/8に日本型ライドシェア利用可能エリアでGoアプリを利用したところ以下のように「ライドシェアドライバー稼働中」の表示が出ました。
「タクシー・ライドシェア」を選択し、マッチングした場合は、運賃が予め確定した状態で指定場所・時間で乗ることができます。4月8日時点では、タクシーとライドシェア車両の選択はできないようでした。気になる方はぜひ一度使って見てください。
安心・安全を保つ仕組みについて
まずはドライバー評価確認機能です。日本型ライドシェア車両への手配の際、当該車両のライドシェアドライバーに対する評価が表示される仕組みになるため、乗車前に確認することができます。乗車後にはドライバーに対する評価をつける画面がアプリに表示されます。乗車体験を利用者全員で評価していくことで、ライドシェアの品質を向上させることができます。
次に乗車中の通報機能です。乗車中、アプリ画面にて警察およびタクシー営業所への通報ボタンが表示されます。万が一身の危険を感じるような事象に遭遇した場合は即座にこの機能を利用しましょう。※画面は開発中のため、実際の仕様とは異なる場合があります。
参照:PR TIMES
Uber
4月上旬より日本型ライドシェアのサービス提供を国土交通省が定めた東京、神奈川、愛知、京都のエリアで開始すると発表しました。そして4月8日に、東京エリアでライドシェアサービスが開始しました。早速アプリを利用してみると、日本型ライドシェアの車両は「自家用タクシー」と表示されました。ライドシェア料金は、Uberの初回利用クーポン50%OFF適用外のため、Uber初回利用の方はタクシー利用の方がお得になる場合があります。
予約フロー
実際に日本型ライドシェアの利用を試みました。予約の前に、「自家用タクシー」の注意事項を確認しました。利用ができない条件や、キャンセル料金について記載されているので、あらかじめ確認しておくことをお勧めします。
実際に予約を行います。移動場所を確定したら事前決済に進みます。Uberに登録している決済方法で決済を行います。
決済が終わったらライドシェア車両の到着を待ちます。
この日は、ライドシェア車両が到着しませんでした。その場合は、このようなキャンセル画面が表示されます。決済した料金は全額返金されます。
安心・安全を保つ仕組みについて
Uberのアプリでは、Uberがグローバルで展開しているライドシェアサービスの運用知見を踏襲し、乗客およびドライバーの安全確保のため、アプリ上の様々な機能を通じて予防と対策を実施しております。
- 家族や友人などの信頼できる連絡先を設定し、乗車状況をリアルタイムで共有する機能
- 利用中に不自然な停車やルート変更を検知し、Uberから乗客に安全確認メッセージを送信する機能
- ドライバーおよび乗客を評価する機能
- 乗車中に問題が発生した場合、アプリの緊急通報ボタンから警察に通報できる機能
これらの機能を活用して、安心・安全にライドシェアサービスを利用しましょう。
参照:PR TIMES
日本型ライドシェアの課題
前述した通り、ドライバー側では、タクシー事業者による研修実施等で顧客満足度の担保と事故防止を図っています。現時点で実装されているかは不明ですが、悪質な利用者の乗車拒否機能もありトラブルを未然に防ぐことができます。そして利用者側では、実装されているか不明ですが評価の低いドライバーの乗車拒否機能や、乗車中に異常があった時のSOS機能など設けられています。
対策は講じられているものの、やはり女性だけで利用する、子供と同乗する状況だと不安は拭いきれません。例えば、女性だけでの利用シーンで想定されるのは有名観光地の旅行での移動、子供と同乗するケースで考えられるのは習い事の送迎などが挙げられます。この場合でも、より安心してライドシェアを利用する環境の一つに、「女性専用ライドシェア」や「チャイルドシート付きライドシェア」が効果的と考えます。
沖縄で実施中の女性専用ライドシェアについて
沖縄県では2024年4月から女性専用ライドシェアの運行を開始しています。運営会社は株式会社オキジモです。オキジモによると、以下の調査結果から女性専用ライドシェアの立ち上げに至ったとされています。
- 海外ライドシェアでは、女性や子どもの安全対策として「女性専用ライドシェア」が提供されている。
- 独自調査で、男性に比べて女性の方が安全面を重要視している結果に。ドライバーとして「安全対策」を重要視する人は女性79.05%、男性57.47%。利用客として「安全性に対する不安」を懸念とした人は女性85.35%、男性77.5%。
- オキジモ30万人ユーザーのボリューム層は30代〜40代の女性、オキジモの満足度向上のため女性に限定。
サービス概要
日本版ライドシェアや海外ライドシェアのような「営利型」ではなく、移動に伴うガソリン代や高速代をドライバーに渡す「非営利型」となります。ドライバーの移動ルートを起点に同乗したい人が応募する相乗りマッチングサービスです。日本国内の類似サービスではnottecoがあります。
ライドシェアドライバー
女性限定
利用対象者
女性または子ども限定(女性と同乗する場合に限り男性も可)
海外のライドシェアと大きく異なる点は、非営利型という点と相乗りマッチングサービスという点です。
まず、非営利型についてです。ライドシェアドライバーの報酬はガソリン代+α(高速代など)になります。よって、国内で展開している日本型ライドシェアと比べると報酬は極端に低くなるため、副業としてのニーズは下がるでしょう。
次に、相乗りマッチングサービスについてです。利用者は目的地に移動する予定のドライバーをプラットフォーム上で探さなければなりません。加えて他の同乗者がいる場合、その人の目的地も経由する必要があります。よって、交通費自体は日本型ライドシェアよりも割安になりますが、マッチングするまで探す時間的コストと移動時間コストが通常の日本型ライドシェアよりもかかってしまいます。ドライバーの参加者と目的地に向かうドライバーにかなり左右されるでしょう。
6月以降でタクシー事業者以外のライドシェアサービスの運用が認められた場合、この取り組みを営利型に切り替えてチャレンジしてもらいたいと個人的に思います。
UberやLyftなど海外ライドシェアの取り組みについて
海外では、女性や子供のライドシェアサービス利用に関する取り組みはどのように行なっているのでしょうか。世界的なシェアを誇るUberやLyftなどの取り組みをご紹介いたします。
Uber
女性利用者優先機能
Uberでは女性にも安全な仕組みを導入しています。専用ページも設けられています。また、Uberオーストラリアのブログにて、女性ライドシェアドライバーに提供されている「女性利用者優先機能」の紹介がありました。
Uberは2022年に「女性利用者優先機能」を開始しました。この機能は、女性ライドシェアドライバーに、Uberアプリで女性利用者からの乗車リクエストを優先的に受信するという機能です。この機能により、単価の高い夜間などの時間帯にライドシェアドライバーの業務をする際、安心感が得られます。より自信を持って深夜帯で働くことができ、収入の機会を増やすことができます。
なお、男性が乗車しようとした場合は直前でキャンセルすることが可能です。この場合、キャンセル料は発生しません。
なぜ、Uberのアメリカではなくオーストラリアがブログでこのような紹介をしたのでしょうか。おそらく後述するShebahを意識したものと思われます。それと、Uberはライドシェアドライバーを主語にして説明されていたので、女性利用者がこの機能が利用できるかどうかまでは確認できませんでした。
チャイルドシート車両の選択
次に子供と同乗するときの機能について紹介します。Uberでは配車のリクエストをする際に車両タイプの選択があり、そこでチャイルドシートの選択を行うことで手配可能です。オプション料金として10ドル追加で支払う必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
日本のUber Taxiはタクシーなのでこのような機能は備わっておりません。また日本型ライドシェアにおいても、現時点でチャイルドシートの選択はできません。二種免許持っていないドライバーの運転になるのでこのようなオプションは必要でしょう。
Lyft
Women+ Connect
アメリカを中心にサービスを展開しているLyftでは、女性ライドシェアドライバーに対して「Women+ Connect」という機能を提供しています。より多くの女性ドライバーと女性マッチングする可能性を高めることができます。基本的な仕組みはUberの「女性利用者優先機能」と同様です。Lyftでは利用者側もこの機能を使えるため、女性ライドシェアドライバーの車両に優先的にマッチングすることもできます。
チャイルドシート車両の選択
Uber同様に配車リクエストをする際にチャイルドシート付きの乗車タイプを選択します。オプション料金として10ドル追加料金が発生します。対象年齢など詳しい注意書きがこちらのページに書かれています。
Shebah
Shebahはオーストラリアの女性専用ライドシェアサービスで、スマートフォンアプリでサービスを利用することができます。Shebahは女性と子供たちに安全な交通手段を提供することを目指しており、Safe Transport Australia (STA) によって運営されています。ドライバーも利用者も女性です。
Shebahで特徴的なサービスは、必要に応じて大切な荷物用の座席や複数のチャイルドシートやブースターを配車時に予約することができます。ペット乗車の予約も行うことができます。
Shebahの料金は利用する州によって異なりますが、最低運賃、キャンセル料、ベビーシート料金はオーストラリア全土で同じです。運賃にはGSTが含まれており、すべての運賃の85%が直接ドライバーに支払われます。
事前予約の場合は 2ドルの予約手数料がかかります。優先ドライバーをリクエストする場合は1ドルの予約手数料がかかります。ベビーシートの料金は1席につき11ドルかかります。
運賃は、基本料金 + (1分あたりの料金×乗車時間)+(1kmあたりの料金×乗車距離) として計算されます。サービスサイトはこちらをご覧ください。
Shebahについてはクラウドファンディングで多額の資金を集めたとされていますが、その9割以上が女性から調達したというレポートもありました。このことからサービスのビジョンが支持されていることがわかります。
まとめ
いかがでしたか?海外では女性ドライバーや女性利用者の安全性を考慮した取り組みがありました。日本型ライドシェアは、深夜帯のタクシー不足エリアが多いという調査結果がありました。ただ、現状の仕組みでは女性が深夜帯に働きにくい環境であることは間違い無いでしょう。その分深夜手当てなどの報酬が得られなくなり、副業としての魅力も失われている可能性があります。
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子供の乗車に向けたアプローチも考えていく必要があります。海外はチャイルドシートのルールをしっかり作っていますが、日本では考慮しきれていないのが現状です。相乗りマッチングサービスで子供が同乗する場合はほとんどチャイルドシートは利用されていないのではないでしょうか。また、日本型ライドシェアにおいても、現状オプションでチャイルドシートを選択する方法が無いため、普通免許ドライバーの運転でチャイルドシートなしで子供を乗車する状態となっているのではないでしょうか。
まだまだ改善が多そうな日本型ライドシェアの現状が見えました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。他の記事もぜひご覧ください!
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